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ホームレスを見る目が変わる「洞窟オジさん」

 作者は加村一馬さんです。以下、概要です。


 作者の加村さんは家庭での折檻に耐えかねて、13歳で家出をし、飼い犬のシロと一緒に足尾銅山の洞窟で生活を始めます。カエルや蛇、猪を狩猟しつつシロと共に大変でも幸せな生活を送っていましたが、シロの死をきっかけに移動をし、農家の人にお世話になったり、駐車場で山菜を売ったり、川で釣りをして生計を立てたりして、最後は福祉施設の用務員に落ち着きます。


 序盤の、家出をした13歳の加村さんを犬のシロが追ってくるところから、シロが死んでしまって弔うまでの話が、短いですがとても美しいです。シロがおじさんを追ってこなかったら、恐らく加村さんは生きられなかったし、仮に生き延びられたとしても、もっと荒んでしまっていたのではないかと思います。

 おじさんは駐車場で山菜を売る頃までお金の使い方を知りませんでしたし、文字も同じくホームレスのおじさんに教えてもらうまで読むことができませんでした。仲間に入れないので学校にも通いませんでしたし、けんかばかりしていたそうです。

 もしかしたら現代で言うところの発達障害や学習障害のようなものがあって、それで周りに溶け込めなかったり、両親に言う事を聞かない子供だと思われたのかも知れないなと思いました。


 本を読んでいると、加村さんは要所要所で色々な人に親切にされています。シロが死んでしばらくしてから、子供を亡くした農家の夫婦に親切にしてもらっているし、川で魚釣りをしている時も、漁協の人が大目に見てくれていたり、おじさんの釣った魚を買いに来る人がいたり、ホームレスのおじさんは字を教えてくれたりです。加村さんが怖い雰囲気の人だったらこういうことは無いと思います。

 一度は自殺をしようと富士の樹海に入った加村さんですが、首つりをした白骨死体を見つけて、「さみしそうでかわいそうになった」と自殺を思いとどまり、その人の骨を集めて弔っています。


 ホームレスの人、山で一人で生活をしている人、というと得体が知れなくて怖いと感じてしまいますが、加村さんのように思いもよらない経緯を経て、ホームレス生活を送る人もいるのだな、とホームレスの人を見る目が変わった一冊です。

 
 
 

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